エルメスは本拠地のパリだけでなく、ニューヨークと中国・上海の3都市からライブ中継で新作を発表した。朝のニューヨークと夜の上海では、ダンサーたちの生き生きとした踊りのパフォーマンス、昼のパリではデザイナーのナデージュ・ヴァンヘシビュルスキーによる新作の数々が披露された。
欧州と米国、アジア。場所や時差など様々な制約に関わらず、人間の体の魅力やファッションの自由さが常に存在することを、改めてさらりと訴えかけた。
パリから見せた新作で目立つのは、黒の多用。ほっそりとつかず離れず体に沿うシルエット。しなやかな黒革のトップスは小さなビスのような金具で留められ、ブルゾンにはこのブランドらしい独創的な抽象柄が刺繡(ししゅう)される。パンツのパイピングやジャケットのフリンジ、ドレスの刺繍など手の込んだディテールが効いている。
各都市の会場の舞台装置として、ブランドの象徴的な色であるオレンジ色が効果的に使われた。ニューヨークではオレンジ色のカーテンが揺れる中、体にぴったりとした、いかにも上質なプルオーバーとタイトスカートにロングブーツ姿などの女性たちが、楽しそうに踊り歩く。上海では、モノクロの格子柄のトップスに革のパンツをはいたダンサーが、オレンジ色の箱を積み重ねたり移動させたりしながら激しいダンスを繰り広げた。パリではオレンジ色の大小の円柱の間をモデルが歩いた。(編集委員・高橋牧子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル